事業レポート
2023年3月15日
ケアの現場の「アートを介した対話」事例紹介&座談会
2023年1月29日、「ケアの現場の『アートを介した対話』事例紹介&座談会」をオンラインにて開催しました。昨年度から実施している「アートを介した対話プログラム」の、令和4年度企画の第二弾。
(第一弾では、医療・福祉従事者向けの対話型鑑賞ワークショップを行いました)
▶令和4年度「対話型鑑賞ワークショップ~医療・福祉分野で働く方対象~」事業レポート
「ケアの現場の『アートを介した対話』事例紹介&座談会」では、高齢者福祉施設などで行う美術鑑賞や創作活動など3つの事例を紹介しながら、ケアの現場における「アートプログラム」について考える機会としました。
ここで示している「アート」とは、作品のみではなく、より広い意味で、作品制作のプロセスや、作品を通した人々の関わり合い、また表現活動など「コトとしての芸術(アート)」だということを、モデレーターの宮田智史さん(NPO法人ドネルモ事務局長)からお話いただき、会がスタートしました。
最初にご登壇いただいたのは、ベネッセスタイルケアの加藤イオさん。建築士として高齢者福祉施設の設計に関わっていらっしゃる加藤さんご自身の活動や、ベネッセスタイルケアで実施されている東京都世田谷区の有料老人ホーム利用者による「ベネッセスタイルケアのART展」、作品展示から対話型鑑賞プログラムへの広がりについてお話いただきました。
次にご登壇いただいたのは、九州産業大学美術館の中込潤さんと香椎丘リハビリテーション病院(福岡市東区)地域連携室の藤洋介さん。美術館と病院が連携した、高齢者に向けたオンライン鑑賞プログラムについて、美術館、病院それぞれの活動背景や両者連携の過程、活動内容についてお話いただきました。
最後に、シティデイサービス長住(福岡市南区)の作業療法士でいらっしゃる香月真さんから、デイサービス利用者による生産活動「Roren」について事例紹介をしていただきました。
日々のデイサービスの活動から、なぜ「Roren」の活動が始まったのか、活動を通じた、利用者、支援者、家族や地域の人々など、関わる人々の反応や変化についてお話いただきました。
後半は、3組の登壇者それぞれの活動の共通点や課題として感じていらっしゃる点などを座談会で意見交換。新たな活動を始めたきっかけや継続について、活動したことによる個人や組織の変化だけでなく社会的な変容について、そして登壇者が考える「アート」について、意見を交わしました。
また、短時間ではありますが、参加者同士の交流や質疑応答の時間を設けました。
以下、参加者アンケートの一部をご紹介します。
・いつもは障害者芸術に偏って活動をすることが多いですが、高齢者福祉の世界でも魅力的な取り組みがあることを具体的に知れてよかったです
・その人の人生の背景にあるものに心が揺さぶられる。それがアートなのでしょう。3組の発表者の方々から共通するメッセージをいただきました。ありがとうございました。
・ケアとアートについて語られる、その事例報告や座談会の途中、わたしの心が感じたことであふれ、外にこぼれだすような気持ちでした。教わった言葉に置き換えると、報告や座談会が作品、それに触れた私には揺さぶりや感情が起こり…つまりアートでした。「コミュニティに参加しづらいと感じている方を取り残して行く問題」ここは私も大事な部分と考えます。健康のために、体操や文化教室に自ら参加できる方々ではなく、様々な理由で機会を得られなかったりサービスと結びついていなかったりする方々。その方々を思い、行動していきたいです。
・在宅医療・地域医療・医福連携に関心を払ってきたつもりだったが、様々な分野で様々な試みがなされていることを知り、勇気づけられ希望を持てた。
・大切な事だと思う一方、公民館の文化祭など既に行われている事と、どう違うのか、どう結びつけていくのか、事業の継続性を含め課題があると思いました。
・身近な福岡でこんな素敵なことをしていたのを初めて知りました。利用者さんたちの持っている力を引き出すエンパワメントでありながら、クラエイントとケアする側という固定化された関係性にも変容を与えていたのがよかったです。
関連リンク
・ケアの現場の「アートを介した対話」事例紹介&座談会 詳細ページ
■開催日時 2023年1月29日(日)14:00~16:30
■会場 オンライン(Zoom)
■主催等 【主催】(公財)福岡市文化芸術振興財団、福岡市
【協力】福岡アジア美術館
【後援】(社福)福岡県社会福祉協議会、(社福)福岡市社会福祉協議会