事業レポート
2023年4月3日
障がいのある子どもたちに向けたアウトリーチ事業〈令和3年度・4年度/メディア・アート〉
福岡市文化芸術振興財団では、障がいのある子どもたちに向けたアウトリーチ事業を行っています。
一つは、(公財)アクロス福岡と実施している「音のかけはし」。市内の特別支援学校に伺い、子どもたちに音楽を届けます。
そしてもう一つは、福岡のクリエイティブ・ラボanno lab、認定NPO法人ニコちゃんの会とともに実施しているメディア・アートを介したアクティビティのプログラム検証です。
本レポートでは、後者の取り組みについて、令和3年度・令和4年度の2年間の歩みをご紹介します。
令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大によってアウトリーチ事業が中止となりましたが※1、このような状況下でどのようなプログラムであれば実施が可能かさまざまな可能性を探ろうと、令和3年度に新たな取り組みをスタートしました。
当財団、anno lab※2、認定NPO法人ニコちゃんの会※3の三者は、重度の障がいのある子どもたち、ケアスタッフ、アーティストが、メディア・アートを介したアクティビティによって起きるさまざまな要素をとらえ、クリエイティブの力を使って何ができるか実験的な試みを行いました。
この取り組みの先に、障がいのある多くの子どもたちが文化芸術に親しむ機会が増えること、またメディア・アートによる障がいの有無を超えた表現の可能性を広げることをめざしています。
令和3年度はアーティストと子どもたち・ケアスタッフの自己紹介からスタート。
メインの対象とした3名の子どもたちの個性を大切にしながら、インタラクティブなアクティビティとするために、ケアスタッフや保護者も含めて何度も会って話し合い、心拍のドキドキと人と人が触れ合うことで「光」と「音」が流れるアート空間をつくりました。
令和3年度の振返りでは、「光と音の共存が幻想的で綺麗」「子どもたちの表情がよく、刺激的だった」「普段関わっている大人と違う行動をする大人(アーティスト)に、子どもたちが興味を持っていた」という意見が出た一方で、「大人はメディアの仕組みのほうが気になってしまった」「スタッフたちの緊張感が子どもたちに伝わっていたかもしれない」などの声から、医療的・福祉的なケアを行うスタッフたちも十分に楽しむことから、さらに子どもたちへもわくわくが伝染することをめざし、「日常の延長」として楽しめるアクティビティを再検討することとしました。
令和4年度は、前年度の反省を踏まえながら、ケアスタッフたちとより多く議論を交わしました。普段の通所施設での「遊び」をアーティストが体験、反対にケアスタッフがアーティストの作品をじっくり体験する場を設けました。
その後もテストを幾度も行い、
・寝たきりの子どもたちの視線に合わせられること
・子どもも大人も表情を確かめ合いながら、一緒の場でアクティビティを楽しめること
・「日常の延長のあそび」として楽しめること
などに視点を置き、透明の傘を活用した、人と人がタッチすることで「光」と「音」が流れるアート体験を行いました。
この度、当財団、anno lab、認定NPO法人ニコちゃんの会の2年間の取り組みを動画にまとめました。
※動画が開かない場合はGoogle Chromeブラウザでお試しください。
このプログラムをどのように発展させていけるか、次のステップにむけて、現在も検証を重ねています。次の段階でのご報告をどうぞご期待ください!
※1 過去のアウトリーチ事業については、協働で事業を実施した認定NPO法人ニコちゃんの会のホームページをご覧ください。
※2 本事業にともに取り組んでいただいたanno lab(あのラボ)は、福岡を拠点に活動するクリエイティブ・ラボです。メディア・アーティスト、アニメーション作家、デザイナーなどクリエイターが集まり、日常の中に新しい体験や価値を生み出していくためのクリエイティブを行っています。
※3 平成30年度から協働でアウトリーチ事業を行っている認定NPO法人ニコちゃんの会は、訪問、通所、相談支援等の介護事業を含む障がい福祉サービスとともに、高齢、聴覚障がい、難病など演劇経験の有無に関係なくさまざまな背景を持つ人とともに演劇を創作・発表する「すっごい演劇アートプロジェクト」を行っています。